経済学部生のための基礎知識300題 ver.2 page 211/308
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基礎知識300# 204国民主権法と社会/憲法日本国憲法の「国民主権」についての学説を紹介せよ。【解説】□解説ビデオクリップ日本国憲法では、国のあり方を決める最終的に権力は国民にあるという「国民主権」が採用さ....
基礎知識300# 204国民主権法と社会/憲法日本国憲法の「国民主権」についての学説を紹介せよ。【解説】□解説ビデオクリップ日本国憲法では、国のあり方を決める最終的に権力は国民にあるという「国民主権」が採用されている。「国民主権」については、大別すれば以下の3つの見解がある。権力的契機説:憲法9条で「平和主義」が採用されているのに世界第2位から6位といった多額の軍事費が費やされたり、憲法25条で「生存権」が保障されているのに国民が餓死するといった事態が生じている。政治家の汚職も依然としてなくならない。国民のための政治が行なわれるためには国民が直接に国のあり方を決定することが必要と考えるのがこの見解である。そして、「国民投票」や「衆議院の解散」など、国民意志が表明される制度を積極的に活用することを主張する。もっとも、政治に興味も関心も知識もない国民が政治に関与すればとんでもない政治が行なわれる可能性が高くなるので、政治・憲法教育の重要性を説く。正当性的契機説:国民主権とは単なる理念であり、実際に国民に国政のあり方を決定させるべきではないというのがこの見解である。国民が国政における最終決定権を持つということは「イデオロギー」になる危険性があると主張する。そのほかにも、ヒトラーの例を挙げると、1934年8月の国民投票で、国民はヒトフューラーラーを大統領兼首相の「総統」(Fuhrer)として認めた。彼の対外的膨張政策に関しては、1933年の国際連盟脱退をめぐる国民投票では投票の92%、36年3月のロカルノ条約破棄とラインラント再武装をめぐる国民投票では99%、1938年3月のオーストリア併合をめぐる国民投票では99%の支持率を得た。このように、国民投票は危険な結果を生じさせる可能性が高いというのがこの見解である。折衷説:端的に言えば、日本国憲法では「権力的契機説」と「正当性的契機説」の両方の立場が採用されているというのがこの見解である。憲法前文を見れば、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し」と間接民主制(議会制民主制)が採用されている。つまり、日本国憲法では原則として「正当性的契機説」が採用されている。しかし、憲法改正の場面で「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票または国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」(憲法96条)とされているように、国民が直接に意志表明をする場面もあり、ここでは「権力的契機説」的な立場となっている。こうした憲法のしくみから、日本国憲法では「権力的契機説」と「正当性的契機説」の2つの立場が採用されているというのがこの見解である。【関連問題】年月日1.首相公選論について論ぜよ。