経済学部生のための基礎知識300題 ver.2

経済学部生のための基礎知識300題 ver.2 page 212/308

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基礎知識300# 205平和主義法と社会/憲法日本国憲法の「平和主義」についての学説を紹介せよ。【解説】□解説ビデオクリップ憲法第2章は「戦争の放棄」となっており、第9条では以下のように規定されている。「日本国....

基礎知識300# 205平和主義法と社会/憲法日本国憲法の「平和主義」についての学説を紹介せよ。【解説】□解説ビデオクリップ憲法第2章は「戦争の放棄」となっており、第9条では以下のように規定されている。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」。ところで、憲法9条で放棄されている「戦争」とは何か。自衛戦争や制裁戦争も放棄されているのか。この問題に関しては、1項の「国際紛争を解決する手段」や2項の「前項の目的を達成するため」という文言をどう解釈するかにより、以下のような見解の対立がある。(1)項全面放棄説:戦争はすべて「国際紛争を解決する手段」として行なわれること、自衛戦争と侵略戦争を区別することは困難であるから、「国際紛争を解決する手段」としての戦争を、自衛戦争や制裁戦争を含めたあらゆる戦争と捉え、その結果、1項で戦争が全面的に放棄されているとする見解である。(2)項全面放棄説:パリ不戦条約(1928年)や「国連憲章」(1945年)で「国際紛争」という用語は「侵略戦争」の意味で用いられたという国際法上の用法に従って、9条1項の「国際紛争を解決する手段」としての戦争を侵略戦争と見做し、1項で禁止されているのは侵略戦争とする。しかし、2項の「前項の目的」を「国際平和を誠実に希求する」と捉え、そのために「陸海空軍その他の戦力」を保持せず、さらには交戦権をも否定した結果、自衛戦争や制裁戦争も放棄されたとする見解である。(3)限定放棄説:この見解も国際法上の用法に従い、「国際紛争を解決する手段」としての戦争=侵略戦争として、9条1項で放棄されている戦争は侵略戦争だけとする。さらに、2項の「前項の目的」を「侵略戦争のため」と解し、自衛戦争や国連憲章に基づく制裁戦争は否定されていないとする見解である。この見解によれば、9条が禁止するのは侵略戦争だけであり、自衛戦争のための戦力や交戦権を持つことは許される。限定放棄説に対しては、①9条が自衛戦争などを認めているとすれば、文民条項(憲法66条2項)以外にも軍隊の編成、指揮権の所在、宣戦講和の手続などが定められているはず、②過去の経験から、自衛戦争を認めると侵略戦争放棄も貫徹されないなどの批判がなされ、この説を採る学者は少数に留まる。そして、2項全面放棄説が学説上では通説となっている。【関連問題】年月日1.戦後歴代日本政府の9条解釈の変遷と政策について論ぜよ。