経済学部生のための基礎知識300題 ver.2

経済学部生のための基礎知識300題 ver.2 page 217/308

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基礎知識300# 210司法権法と社会/憲法司法権について論ぜよ。【解説】□解説ビデオクリップ憲法76条では、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」とされ、司法権が....

基礎知識300# 210司法権法と社会/憲法司法権について論ぜよ。【解説】□解説ビデオクリップ憲法76条では、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」とされ、司法権が最高裁判所以下の裁判所に属することを規定している。ところで、「司法」とは何か。日本国憲法の司法権とは、「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家の作用」という見解が一般的な支持を得ており、実際の裁判でもそうした考え方で運用されている。まず、日本国憲法の「司法権」には、「民事・刑事」だけではなく、行政事件も含まれる。明治憲法下での行政裁判所は、全国に1ヵ所しかなく、しかも出訴事項に列記主義が採用された結果として提訴事項が限定されているなど、個人の権利保障という観点からみれば極めて不充分だった。こうした敗戦前の司法のあり方に対する反省として、日本国憲法の司法権には「行政事件」も含められ、行政機関の行為も司法裁判所の判断に服することになっている。さらに、「具体的な争訟」について裁定するということが司法権の本質的要素として挙げられる。「具体的な争訟」とは、裁判所法3条の「一切の法律上の争訟」と同じ意味であり、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法律を適用することによって最終的に解決することができるものに限られるとされている。こうした「法律上の争訟」からは、単なる事実の確認、個人の主観的意見の是非、学問上・技術上の論争などは裁判所の審査権が及ばないとされている。また、訴えた者に対する具体的な権利侵害が存在しないのに提訴がなされた事柄については裁判所が判断できないと考えられている。実際の裁判では、国家試験の合格の当否は「法律上の争訟」とはいえないと最高裁は判断した(最判昭和41年2月8日民集20巻2号196頁)。創価学会に対して寄付をした元創価学会の会員が、本尊たる「板まんだら」は偽物であり、それに対して行った寄付行為には錯誤の要素があったとして寄付金の返還を求めた「板まんだら事件」で最高裁は、この事件を解決する前提として、宗教の教義について判断をせざるを得ず、法令の適用による最終的な判断が不可能であり、「法律上の争訟」にはあたらないと判示した(最判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁)。警察予備隊の合憲性が問題となった「警察予備隊違憲訴訟」で最高裁は「特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所はその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令などの合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上および法令上何らの根拠も存しない」(最判昭和27年10月8日民集6巻9号783頁)と判示した。【関連問題】年月日1.司法権の独立について紹介せよ。