経済学部生のための基礎知識300題 ver.2

経済学部生のための基礎知識300題 ver.2 page 98/308

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基礎知識300歴史から学ぶ経済学# 91近代資本主義世界の経済/西洋経済史近代資本主義世界経済の主要な成立契機について述べなさい。【解説】□解説ビデオクリップ近代資本主義世界経済は、西ヨーロッパにおける市場経....

基礎知識300歴史から学ぶ経済学# 91近代資本主義世界の経済/西洋経済史近代資本主義世界経済の主要な成立契機について述べなさい。【解説】□解説ビデオクリップ近代資本主義世界経済は、西ヨーロッパにおける市場経済の発展の延長として成立することとなった。13世紀北イタリアにおいて市場経済の主要な技術や制度、複式簿記・会社・銀行・振替相殺・為替手形・計算貨幣による決済などが考案され、それが徐々に西ヨーロッパに広がり、15世紀末には中世世界経済として展開されていた。その後、16世紀には低地諸国さらにはイギリスの経済発展が著しく、ヨーロッパ経済は大西洋を越えて新大陸にも広がり始め、さらには本格的にアジアに進出を開始し、資本主義世界経済として成立することとなった。この時期にはまだ農業中心の産業構造と商業資本主導による経済であったが、それまでの地中海や内陸ヨーロッパ中心から大西洋地域やさらには世界に拡大するととみに中世的制約を克服し、本格的な手工業の発展が始まり、それらの世界商品が低地地域、アントワープで集中的に取引されるようになり、17世紀に入ると主要商品がアムステルダム経由で取引決済され、そのためにアムステルダム為替銀行を中核とする近代的金融システムが成立することとなった。このような16、17世紀の市場経済の世界資本主義経済への発展を商業革命(commercial revolution)と呼んでいる。資本主義世界経済成立期には人口の増加とそれを扶養するための農業の変革が不可欠であった。イギリスでは17世紀、それまでの三圃農法から近代的な農法へ移行しつつあり、肥料の多投とマメ科植物の導入による休閑の廃止などによって、個人による資本家的農業が可能となり、この時期の急激な人口増加を実現するための農業生産力の飛躍発展を達成することとなった。これを農業革命と呼ぶ。資本主義市場経済は、前近代社会が持っていた様々な規制や特権を廃止し、資本家による自由な活動が保障されなければならない。それを実現したのが市民化革命であり、職業選択の自由や商業活動の自由さらには、思想信条の自由などが実現することによって市場経済は資本による自由な活動が実現することになった。こうして成立した資本主義世界経済システムは、産業革命の達成によって、従来では考えられない生産力の発展を実現し、資本による巨大な生産力によって世界を席巻し、産業革命の終了時点では地球上の90%近くを植民地として支配し、文字通り資本主義世界経済システムとして西ヨーロッパ文明は立ち現れることとなる。参考文献:楊枝嗣朗著『近代初期イギリス金融革命』ミネルヴァ書房, 2004年;I.ウォーラースティン著川北稔訳『近代世界システム1600~1750』名古屋大学出版会, 1993年