このような情報技術に着目し、ヴァーチャル万博を開催してはどうか。現在、愛知万博について、賛否両論の論争が繰り広げられている。開催するならば、仮想空間上でやるとおもしろい。情報技術が人間社会にとってどういう意味を持つかは、新世紀の国際的イベント、万博の重要なテーマである。しかも、仮想空間内にパビリオンをつくれば、わざわざ万博開催地に足を運ばなくとも誰でも各パビリオンを見学できる。環境破壊も問題にならない。
既にコンピュータ・ネットワークがグローバルに張り巡らされている今日、ヴァーチャル万博は誰でも考えつくに違いない。実際、その種のものは既に存在している。たとえば、立花隆氏の近著『インターネットはグローバル・ブレイン』(講談社、1997年)は、現在アメリカの議会図書館が主催している「ウェブ万博」を取り上げている。同著によると、この万博は歴史資料中心の仮想万博であり、コンピュータ上にいくつかのパビリオンが立ち並んでいる。見学者は、コンピュータ上で仮想的に、チケットを購入して、バスに乗って各パビリオンをまわるのである(立花、1997年、76‐77頁)。
現在のところ、情報技術がグローバル・ブレインであるかは見解の分かれるところかもしれないが、今後、情報技術の発展が続くことは間違いない。われわれがそうした情報技術といかに「共生」していくかを探るヴァーチャル愛知万博の意義は決して小さくない。