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私の中国語学習法−留学前を中心に−





樋口勇夫
[Higuchi,Isao 外国語学部助教授・中国語学]





 初めて中国語を学ぶ新入生から既に数年間学んだ上級生に至るまで、様々な学習段階にある学生諸君から、中国語の学習法についてしばしば相談を受ける。ついこの前までの(?)自分の学生時代を思い出し、参考までに、私自身がやった学習法を紹介する。

 1.各課の構成が単語・文法事項・本文などから成る、所謂「教科書」で学ぶ段階

 発音については、手でピンイン(■音)を書き、それを目で見、口で発音し、耳でその音をモニターする、というように、体の様々な感覚をフル活用し、何度も練習して筋肉感覚で体に覚え込ませる。特に、発音している時、唇の形・舌の位置・開口度・時間の推移に沿って変化する音の高低(声調)の感覚を意識する。

 日本語に無い音は、放送・マイク・テープなどを媒介にした音声では自ずと限界があるので、先生に頼んでできるだけ数多く肉声で聞かせて貰うと良い。

 単語のレベルでも文のレベルでも、「3本のライン」−@ピンインA簡体字の漢字B日本語訳−を1セットにして覚える。「3本」のうち、どの1本だけを与えられても、残り2本をパッと反射的に答えられるまで、何度も書いて練習する。

 この段階では、教科書の本文のような短めの基本文をそのまま覚えて、ある程度数、頭の中に溜める必要がある。

 2.小説など、中国人大衆向けに書かれた文章の読解によって学ぶ段階

 発音と基本的文法事項を一通りマスターしたら、後はハッキリ言って、語彙力勝負。1語でも多く知ってる奴が勝ちなので、知らない単語は選り好みせず、片っ端から全部覚える。語彙を増やすには、原文の講読が最も効率が良い。
 
 中国語に限らず、その外国語で生活している人達が日常読む原文を、@「辞書を引き引き苦労して訳すレベル」から、A「辞書なしでも大方訳せるレベル」になって初めて、少なくとも「読み」に関してはその外国語を習得できた、と言えよう。

 講読の授業やラジオ講座が終わったら、知らなかった単語について、まず、辞書のその単語の、漢字・ピンイン・文中での訳語、に赤線を引き、辞書にその訳語や単語自体がない場合は、赤で書き込んでしまう。次に、単語カードの表に漢字、裏にピンインと意味を書き、表→裏(漢→ピ・意)、裏→表(ピ→漢、意→漢)、が正確にできるようになるまで練習し、終わったらピンインのアルファベット順に並べて溜めていく。私の場合、この「辞書の赤線引き」と「カード作り」を5,000語やった頃、Aのレベルに到達していた。

 ラジオ講座は、お金がかからず、信頼でき、毎日必ず勉強するペースメーカーとなり、有効である。私は5年間聞き続け、出て来た単語は全部やっつけた。自分のレベルが上がっても、ゲストが読むすぐ後について何も見ずに言うなど、目標はいくらでも調節可能。

 3.話す能力を向上させるために

 中国語を「話す」には、頭の中で文を瞬時に組み立てて言わなければならないが、「話す」練習をする前に、文字の上でゆっくり考えながら、まず「書く」練習をすると良い。いきなり長い日本語の文章を中国語訳するのは難しいので、まず1行ぐらいの短い日文を、ある程度数、中訳する段階があると望ましい。

 私の場合は専門学校の作文の授業に1年間出たが、中作文テキストの日文を中訳して日本語の上手い中国人に見て貰っても良い。予習では、必要なら日中辞典を引き、各部分について、こうも言えるやろ、こうは多分言えんやろうけど、など色んな可能性をとりあえず全て書いてみる。授業では、模範解答例以外に、各部分が他の言い方と入れ替え可能かどうか確認する。ここで養った、中国語の文を組み立てる力は、後に中国へ留学して中国語を話す際、大いに役立った。

 後は、中国人の友人に中国語でちょくちょく手紙を書けば、どんどん書き慣れていく。尚、何度も推敲するにはワープロの画面が有効。


図書館報「α」Vol.10 No.2目次にもどる