特集:キレる若者達





『夢』いつまでも





篠田信(しのだ しん)


[経済経営研究科・経営政策専攻・2年]



 当図書館報へ『キレる若者達』というテーマで原稿執筆の依頼を受けました。大学院生である私は、20歳の息子と18歳の娘をもつ親でもあります。この原稿を書いている1月15日、息子は成人を迎えました。成人式に出かけるためスーツ姿になった彼に、私はネクタイを結んでやりながら、これまで共に生活してきた中で、出くわし、そして乗り越えてきた山や谷のことを思い出しつつ、新しい青年が我が家にも生まれたことを実感し、彼の新しい将来に「夢」多かれと祝福しています。

 さて、テーマについてですが、私は社会学や心理学を深く理解しているわけでもありません、評論家でもありません。団塊の世代と言われる社会人で、かつ、1960年代の学園紛争の中、青春を過ごしてきた者としてお話ししようかと考えていました。

 そんな折り、新聞に青少年の非行が増え、凶暴・粗暴化が進んでいることが掲載されていました。1998年度版「青少年白書」によると問題行動を起こした少年の特徴について「欲望や衝動をコントロールできず短絡的」「被害者や周囲の受ける悲しみについての認識に欠ける」などと指摘している。また「大人が将来に期待を持てないような社会の閉そく感・不安感は、青少年の意識にも影を落としている」とも言い、大人社会への不安感が青少年にも悪影響を与えていることを強調している、と報じていました。

 また、このテーマについて何を書こうかと迷っていた時、ふと目にした週刊誌には「身勝手な子、非常識な親」という特集記事があり、親の身勝手さを見習う子どもたち、そのマナーの悪さ、傍若無人ぶりについて掲載されていました。“家庭でのしつけが消えた”ことをとりあげ、親たちが、子どもとどう血の通った関わりを持つか、人との繋がりを紡ぎだしていくのか、といった問題の提起をしていました。

 「キレたり、傍若無人であったり、周りへの目配りもない」若者や子どもたちにしている真の原因は、大人たちとその社会環境にある、と言っています。私たちを取り巻く環境、家庭や学校、企業など、本来人間の「人格」を認め合い、尊重しあわなければならない場にもかかわらず、それを傷つけ、踏みにじることが、公然と行われているのではないでしょうか。家庭内[親子、夫による妻への]暴力、臭いモノには蓋・切り捨ての教育、リストラと称した企業内暴力など。多くの若者や子どもにとって、大人にとっても「夢」を持って生きて行くことが困難で、その芽さえも摘まれてしまう社会環境になっていると思います。

 今、私たち大人は原点に立ち返って、信じ合い、人を愛することの大切さを考える時だと思います。それは、個人にとっても、学校や企業にとっても必要なことだと言えます。また、「夢」を持つことで、それぞれが変革をし、成長して行くことに繋がるのではないでしょうか。

 私は一粒の麦となって(学部時代の宗教学とチャペルの時間には熱心ではありませんでしたが)、企業や社会の中で、一人でも多くの人に理解してもらえるようにそれらを実践して行きたいと思っています。

図書館報「α」 Vol.11 No.1 目次にもどる