編集後記
今年1999年は、ウオールストリート発1929年世界大恐慌から丁度70年である。現在、米国を除いて世界的に不況が深刻化している。とりわけ、現下の日本の不況は深刻である。この不況の性格を巡っては諸説が入り乱れている。さすがに「景気循環型不況」説は長期にわたる日本の不況の説明には分が悪くなってきている。
おそらく「構造不況」説か「大恐慌型不況」説が正しいのだろうと「日本経済新聞」「エコノミスト」(毎日新聞社)読者の「自称にわかエコノミスト」は認識しているところである。この不況はデフレ局面に入っていることは間違いなく、日経新聞は98年12月の日銀短観の分析を通してデフレスパイラルの懸念を表明した。
デフレの進行は当然にして経済の収縮をもたらし、企業業績の低迷、リストラの横行、賃金の低下、消費の不振と連鎖していく。景気の先行指標とされる有効求人倍率は98年11月には0.47倍と過去最低となり、遅行指標である完全失業率も同時点で4.4%と過去最悪となっている。今年も昨年同様にリストラ、失業、倒産、個人破産、犯罪が激増し戦後最悪の「大変な年」になると思われる。経済雑誌を読んでも明るい兆しはどこにも見られない。
こうした事態にどのように対処すべきか。賢者は「事態を直視し、最悪の事態を想定して対策をとる」のに対して愚者は「当面のその場しのぎの対応でごまかしていく」のである。もはや、日本のみならずいかなる企業や団体といえども問題の先送りは許されない状況となってきた。
賢者は最後には勝つ。経済危機に対するここ数年の日本の政策当局の失敗は愚者の典型であると思われるのである。キレるのは若者ばかりではない。この深刻化する不況の長期化に伴って、生活破綻からキレる大人も発生する可能性は高いとみなければならない。 (倉)
図書館報「α」 Vol.11 No.1
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