特集:私のオールタイム・ベスト
絵 本
増田あゆみ
[Masuta,Ayumi 商学部講師・国際関係論]
私は、職業柄、本棚に並べられた本をながめる機会が多くあります。
そこに並べられた本は、自分の専門分野である国際関係論・国際政治学関係がほとんどです。これらの本が、愛読書になるわけはなく(ならないといけないのかもしれませんが)、かといって、「愛読書」にあたる本も思い浮かべられません。ただ、絵と少しの文字が書いてある本をながめるのは大好きです。
外国に行って、必ずすることのなかに、本屋めぐりがあります。この本屋めぐりは「専門分野の新刊書のチェックのため」というのが名目なわけですが、店に入ると、真っ先に足が向いてしまうのが、「絵本」のコーナーなのです。
挿絵とともにならべられた文字のすべてを理解することはできませんが、絵に関しては、いつも、驚きとわくわくするような感覚で接することができます。
描かれた絵の雰囲気、それは、使われる色の種類や強さ、筆のタッチによってかもしだされるわけですが、そうした雰囲気に触れることによって、その国の子供に対する姿勢が自然と伝わってくるわけです。それは、各国が、政府を通して見せる表向き(?)の顔とは別のもうひとつの顔であるわけです。
外国に行って、現地の市場を覗いて、その国の現状をみるという方法がありますが、私は、絵本からその国の表情をうかがうことに、ひそかな楽しみを見出だしています。
出会う絵本のほとんどは、思わず頬を緩ませてくれたり、優しい気持ちにさせてくれたりするものですが、思わず眉を寄せてしまうようなものもあります。
また、絵本を作る紙や印刷の状態なども国によりさまざまです。使われる紙の材質が、その国の経済状況や、自然環境への姿勢を現していたりします。
これらの絵本が教えてくれることは、ぶ厚い書籍の山から得られることよりもずっと明確で、重要であったりします。
「文字」を読むのがあまり好きではない私ですが、絵本の中にある「言葉」をみるのは大好きです。現地の友人に翻訳してもらうことがしばしばですが、その言葉の扱い方に、いつも感銘を受けます。
その国の持つ文化への誇りと文化のレベルやセンスのようなものを垣間見ることができるのです。
最近、気にかかるのは、日本の絵本です。素晴らしく良い紙の上に、見事な印刷で、絵が載せられているのですが、何故か落ち着かないものが多いのです。
いったいどこの国の絵本なのかわからないようなものが多く目につくと同時に、似たような絵、パターンを持つものが多くみられます。
とても、「絵本」のコーナーに足が向くというような状況ではありません。おかげで、「専門書」のコーナーへと向かうことができるわけですが、何故かさみしい気持ちになります。
皆さんは、絵本が好きですか?私は、大好きなのですが、もっともっと好きになれる絵本に出会いたいと日々探求しています。
いい絵本に会ってもきづかない自分では恥ずかしいですから、そのための努力もしていきたいと思います。そのための努力をどうやってするのか?図書館へ通うのもひとつの方法でしょうか。
図書館報「α」Vol.9 No.2目次にもどる