解答手順

この問題は

  1. 元帳残高から8桁精算表の試算表欄への転記ができるかを確認する
  2. 試算表の貸借が一致するところから不明科目の特定と残高を推定する能力の確認
  3. 決算予備手続の理解の確認と、個々の勘定の処理方法の理解の確認
  4. 決算整理仕訳の記述能力の確認と精算表の修正記入欄への記入方法の理解の確認
  5. 勘定科目が属するグループ(資産・負債・資本・収益・費用)の理解と精算表の損益(損益計算書)、残高(貸借対照表)欄への転記能力の確認
  6. 利益額を算出する方法を理解しているか確認
  7. 一般的に用いられる簿記手続等の名称の理解度を確認

することを目的としている。

 このような総合的な問題は、最初に全体を眺め、それぞれの事項の関係を把握することが必要である。

勘定残高から試算表への転記作業

(1) 決算日現在の各元帳の残高は次のようである。なお、資本金勘定については、残高の資料が作成されていない
現金
50,000
普通預金
3,195,000
売掛金
1,900,000
貸倒引当金
2,000
商品
200,000
備品
800,000
借入金
3,000,000
買掛金
1,698,000
減価償却累計額
300,000
売上
10,000,000
仕入
6,500,000
給料
2,000,000
保険料
300,000
支払利息
200,000
現金過不足
10,000
有価証券
845,000

この問題文は、「資本金勘定」が欠落しており、その額を求めることを求めている。

 勘定残高が借方にあるのか貸方にあるのかの理解している必要がある。また現金過不足勘定の残高は、この資料だけでは借方残高か貸方残高か明確ではない。これは「(2)@現金過不足\10,000 は原因が判明しないので、雑損とする。」から推定する。現金過不足勘定は決算時点では残高が0にする必要がある。そこで、(2)@の仕訳により残高が0となるためには、残高が借方か貸方かが推定できる。

 具体的には (借方)雑損 10,000 (貸方)現金過不足 10,000 という仕訳になるから、現金過不足の元帳の残高は借方にある。

勘定科目
試算表
整理記入
損益計算書
貸借対照表
借方
貸方
借方
貸方
借方
貸方
借方
貸方
現金
50,000
 
 
 
現金過不足
10,000
 
 
 
普通預金
3,195,000
 
 
 
売掛金
1,900,000
 
 
 
貸倒引当金
 
2,000
 
 
商品
200,000
 
 
 
備品
800,000
 
 
 
減価償却累計額
 
300,000
 
 
有価証券
845,000
 
 
 
買掛金
 
1,698,000
 
  
借入金
 
3,000,000
 
 
資本金
 
1,000,000
 
 
売上
 
10,000,000
 
 
仕入
6,500,000
 
 
 
給料
2,000,000
 
 
 
保険料
300,000
 
 
 
支払利息
200,000
 
 
 
合計を記入する⇒
16,000,000
16,000,000
 
 

 試算表の勘定科目のブランク欄には「資本金」を記入する。借方合計は16,000,000となり、貸方合計は15,000,000となるから、資本金勘定の残高は16,000,000-15,000,000=1,000,000となる。

決算整理事項について検討する

決算修正事項に関連して、精算表の勘定科目欄に追加記入する勘定科目名についての情報が提供されている。この勘定科目は決算修正仕訳で生じるものである。

(2) 決算整理事項は次のとおり。これにより決算整理仕訳を行いなさい。
@ 現金過不足\10,000 は原因が判明しないので、雑損とする。

雑損勘定は費用勘定であり、費用勘定は借方に発生するから、この仕訳は
(借方)雑損 10,000 (貸方)現金過不足 10,000
となる。


A 備品は定率法により減価償却を行う。残存価格は取得価格の10%、耐用年数は5年、償却率は0.369である。

定率法の計算式と定額法の計算式を確認すること

定率法による減価償却費=(取得価額−減価償却累計額)×償却率

である。問題文の耐用年数は償却率が呈示されているので、本問には関係のないデータである。各元帳勘定を眺めると「減価償却資産」は「備品」勘定のみである。また「減価償却累計額」勘定があるが、「備品」勘定しかないので、この勘定は「備品勘定の評価勘定」である。また「累計額」勘定があることから、間接法を採用していることがわかる。

(備品勘定(800,000)−減価償却累計額(300,000))×償却率(0.369)=減価償却費(184,500)

(借方)減価償却費 184,500(貸方)減価償却累計額 184,500

B 期末商品棚卸額は\700,000である。

仕入勘定を用いて売上原価を求める方法(三分法)の定型仕訳パターンを理解し、確実に仕訳ができる。

基本パターン

(借方)仕入 XXXXXX (貸方) 商品 XXXXXX ・・・・・繰越商品在庫を原価に振り替える
(借方)商品 XXXXXX (貸方) 仕入 XXXXXX ・・・・・期末商品在庫を原価から控除する

これに商品勘定残高と期末在庫情報を合わせると

(借方) 仕入 200,000 (貸方) 商品 200,000
(借方) 商品 700,000 (貸方) 仕入 700,000

という仕訳が必要である。


C 売掛金勘定の残高が、実際の残高よりも\100,000不足していた。調査の結果、ひいらぎ商店への現金売上を、売掛金の回収として仕訳していたことが判明した。

もともと行わうはずの仕訳は、(借方) 現金 100,000  (貸方) 売上 100,000 であるが、これを
(借方) 現金 100,000  (貸方) 売掛金 100,000 としたのである。訂正するには 売上を発生させ、売掛金を増加させる必要がある。よって、修正仕訳は

(借方) 売掛金 100,000  (貸方) 売上 100,000

となる
D 売掛金の残高に対して2%の貸し倒れを見積もる。貸倒引当金の繰り入れは、残高を補充する方法によること。

売掛金の残高はCにより、1,900,000+100,000=2,000,000 となる。この額について2%の貸倒れを予測するから、予測額は 2,000,000×0.02=40,000 となる。

貸倒引当金勘定の残高は2,000であるが、これを40,000とすればいいから、差引38,000分貸倒引当金を増加させればよい。よって、差額補充法による仕訳は

(借方) 貸倒引当金繰入 38,000  (貸方)  貸倒引当金 38,000

となる
E 有価証券を\800,000に評価替えする。

有価証券勘定の残高は845,000であり、これを800,000に減額するには45,000分有価証券勘定から控除すればよい。よって

(借方) 有価証券評価損 45,000  (貸方) 有価証券 45,000

となる
F 保険料の内\100,000は前払額であることが判明した。

費用の繰延の問題である。保険料として費用処理されているもののなかに、次の事業年度の費用が含まれているので、この金額を保険料から控除し、その金額を「前払金」ないし「前払保険料」として処理する。よって

(借方) 前払保険料 100,000  (貸方) 保険料 100,000

となる
G 借入金の利息\100,000を、まだ支払っていない。

費用の見越の問題である。当期の費用とすべき利息を支払っていないので、これを当期の費用とする。そのため支払利息100,000を発生させ、その金額が未払いであることから「未払利息勘定」に記入し、次の事業年度に債務が残っていることを明らかにする。よって

(借方) 支払利息 100,000  (貸方) 未払利息 100,000

となる
H 普通預金の利息\5,000が普通預金口座に振り込まれていたが、その仕訳が行われていない。(所得税は考慮しなくてもよい)

銀行の普通預金の記録と会社側の普通預金勘定の不一致を解消する問題である。会社側の残高は3,195,000であり、銀行側は3,200,000である。その誤差原因が預金利息の未記帳である。よって

(借方) 普通預金 100,000  (貸方) 受取利息 100,000

となる

以上の決算整理仕訳を「決算整理仕訳記入欄」に記入する。つぎに精算表の整理記入欄に記入する。

【精算表の整理記入の仕方】

(借方) 雑損 10,000  (貸方) 現金過不足 10,000 の記入方法は次のように行う

(借方) 雑損 10,000 の記入方法

勘定科目の列で「雑損」を探す。なければ勘定科目を記入する。ついで整理記入の借方列と「雑損」の行が交差する場所に10,000を記入する。

(貸方) 現金過不足 10,000 の記入方法

勘定科目の列で「現金過不足」を探す。なければ勘定科目を記入する。ついで整理記入の貸方列と「現金過不足」の行が交差する場所に10,000を記入する。

これを繰り返す。すべて記入が終わったら、整理記入欄の借方、貸方の合計を求め、合計記入欄に記入する。このとき両方の合計が一致していることを確認する。違っていれば金額記入に誤りがある。

勘定科目
試算表
整理記入
損益計算書
貸借対照表
借方
貸方
借方
貸方
借方
貸方
借方
貸方
現金
50,000
 
 
 
現金過不足
10,000
 
 
10,000
普通預金
3,195,000
 
5,000
 
売掛金
1,900,000
 
100,000
 
貸倒引当金
 
2,000
 
38,000
商品
200,000
 
700,000
200,000
備品
800,000
 
 
 
減価償却累計額
 
300,000
 
184,500
有価証券
845,000
 
 
45,000
買掛金
 
1,698,000
 
  
借入金
 
3,000,000
 
 
資本金
 
1,000,000
 
 
売上
 
10,000,000
 
100,000
仕入
6,500,000
 
200,000
700,000
給料
2,000,000
 
 
 
保険料
300,000
 
 
100,000
支払利息
200,000
 
100,000
 
16,000,000
16,000,000
 
 
雑損    
10,000
 
減価償却費    
184,500
 
貸倒引当金繰入    
38,000
 
有価証券評価    
45,000
 
前払保険料    
100,000
 
未払利息    
 
100,000
受取利息    
 
5,000
当期(     )    
 
 
合計を記入する⇒
   
1,482,500
1,482,500

【精算表の損益、貸借欄の記入】

最初に損益(損益計算書)欄に、収益・費用勘定の数値を計算して転記する。

借方合計、貸方合計を求める。合計が不一致のときは

借方>貸方 貸方側に差額を記入し、損失とする

借方<貸方 借方側に差額を記入し、利益とする

利益または損失を含めた合計を合計欄に記入する

残高(貸借対照表)欄に、資産・負債・資本勘定の数値を計算して転記する。

借方合計、貸方合計を求める。合計が不一致のときは

借方>貸方 貸方側に差額を記入し、利益とする

借方<貸方 借方側に差額を記入し、損失とする

損益の利益または損失と、貸借の利益または損失が同額で、それぞれ反対側にあることを確認する

もし一致しないときは、ここの作業のどこかで間違いがある。

利益または損失を含めた合計を合計欄に記入する

勘定科目
試算表
整理記入
損益計算書
貸借対照表
借方
貸方
借方
貸方
借方
貸方
借方
貸方
現金
50,000
 
 
 
 
 
50,000
 
現金過不足
10,000
 
 
10,000
 
 
0
 
普通預金
3,195,000
 
5,000
 
 
 
3,200,000
 
売掛金
1,900,000
 
100,000
 
 
 
2,000,000
 
貸倒引当金
 
2,000
 
38,000
 
 
 
40,000
商品
200,000
 
700,000
200,000
 
 
700,000
 
備品
800,000
 
 
 
 
 
800,000
 
減価償却累計額
 
300,000
 
184,500
 
 
 
484,500
有価証券
845,000
 
 
45,000
 
 
800,000
 
買掛金
 
1,698,000
 
  
 
 
 
1,698,000
借入金
 
3,000,000
 
 
 
 
 
3,000,000
資本金
 
1,000,000
 
 
 
 
 
1,000,000
売上
 
10,000,000
 
100,000
 
10,100,000
 
 
仕入
6,500,000
 
200,000
700,000
6,000,000
 
 
 
給料
2,000,000
 
 
 
2,000,000
 
 
 
保険料
300,000
 
 
100,000
200,000
 
 
 
支払利息
200,000
 
100,000
 
300,000
 
 
 
16,000,000
16,000,000
 
 
 
 
 
 
雑損
10,000
 
10,000
 
 
 
減価償却費
184,500
 
184,500
 
 
 
貸倒引当金繰入
38,000
 
38,000
 
 
 
有価証券評価
45,000
 
45,000
 
 
 
前払保険料
100,000
 
 
 
100,000
 
未払利息
 
100,000
 
 
 
100,000
受取利息
 
5,000
 
5,000
 
 
当期利益
 
 
1,327,500
 
 
1,327,500
合計を記入する⇒
1,482,500
1,482,500
10,105,000
10,105,000
7,650,000
7,650,000

 

(4) 次の空欄を補充しなさい。解答は別紙解答欄に記入すること。

    当社の採用している減価償却の記帳方法を(  @  )という。

    当社の採用している貸倒引当金の処理方法を(  A  )という。

    (2)のFの期末修正を(  B  )の(  C  )という。

    (2)のGの期末修正を(  D  )の(  E  )という。

    決算手続きには(  F  )、(  G  )、(  H  )がある。

    財務諸表の表示形式には(  I  )と(  J  )とがある。

    個人企業の資本金勘定で、生活費などの支払いを特に管理するために設ける勘定を(  K  )という。