○司会 三井さん、どうもありがとうございました。
紹介がありましたように、これまでの緻密な、特にデザイン博を中心とした緻密な経済効果に関する計測に基づきまして、今後、国際博覧会を開催していくうえでの留意点であるとか、あるいは期待される経済効果についてご説明がございました。一応1時間にわたってお話を聞いていただきまして、多少皆さんもお疲れのこととは思うんですけれども、せっかく今、われわれの頭のなかにその内容が残っているうちに少し議論を深めていきたいと思います。
まず、先ほどのスケジュールに従いまして、小井川さんから今の三井さんのご報告についてコメント、それからご質問等をいただければというふうに思います。よろしくお願いします。
○小井川 ただいまご紹介にあずかりました、経済学部で国際経済学と開発経済学というものを教えております小井川と申します。
開発経済学と申しましても地域開発ではなくて、アジアの方の経済発展の問題を取り上げておりますので、特にこちらの方面で非常にノウハウをたくさん積まれております三井先生に対してコメントするには、なかなか力不足ではあるんですけれども、そのなかから私からいくつか気づいた点を述べさせていただきたいと思います。
今の三井先生のお話、非常に細かいところまで、私どものような素人からすると非常に細かいところまで説明していただいて大変おもしろく聞かせていただいたんですが、大きくまとめるとこんなことじゃないかなというふうに私は今の話を総括させてもらいました。私の主観も含まれていますけれども。
その1つは、どうも経済効果云々というのは、そもそも測るのは技術的に難しいということです。それには非常に恣意的な仮定を入れたりですとか、かなり細かいアンケート調査などのリサーチを行って、はじめてある程度もやっとした数字が出てくるというふうに解釈させてもらいました。
それじゃあ何のためにそんな手間のかかることをするのか。これは基本的には地域にどのくらいこぼれ落ちるお金が入りそうですよという、あくまで正当化のために行うというふうに紹介していただいたと解釈しております。つまり、例えば万博なり、あるいはそういう形のイベントがこちらで開催されると、工事ですとか、あるいは騒音ですとか、ごみですとか、いろんな負担は残るんですが、しかし、皆さん全体としてこれだけ儲かるからいいじゃないですかという正当化に使われてきたきらいがあるわけですね。そういう点を紹介していただいたというふうに思います。
ところが、この三井先生の今のお話のなかにはいくつか示唆に富む点があったと思います。1つは、その量そのものがあやふやなものなのだ、測定結果そのものにかなり恣意性が入るんですよというお話と、そしてもう1つ、驚くべき事実はその効果がどうもあやふやな数字ではあるけれども、傾向的に年々低下しているのだということであります。
三井先生はその辺に主観を挟まれるをあえて避けられているようではございますけれども、どうも三井先生のメッセージからいたしますと、あまり経済効果云々と言うのは、もうそろそろやめにしないかという気が三井先生のお話を伺って私は意識しました。
最後の方に三井先生は、われわれがこれからなすべきこと、いろいろな話を箇条書きにして説明してもらいましたね。たとえば、我々から情報発信していこう。情報発信の拠点となっていこう。あるいは自然との共生というかたちで新しい将来の、未来のライフスタイルを探していこう。あるいは、国際的な相互理解の場に万博がなればいいのではないかという、いろんなアイデアを出していただきましたけれども、これはもう明らかですけれども、経済効果云々とは全然次元の違う、もっとわれわれができる草の根の話ですね。そう考えていきますとやっぱり経済効果云々であれこれ騒ぐのは好ましくないのではないかという気が、三井先生のお話からいたしました。
さらに、蛇足になりますけれども、たとえば大阪ですとか筑波ですとか富山、これは、もちろん開催には経済効果云々という正当性が付与されたにしても、もし結果的に成功したとすればこれはそういうことではなくて地域が主体的に地域の魅力を高めた結果、たとえば筑波に工業団地が来たでありますとか、3Kの富山のイメージが払拭されたというふうな経済効果であらかじめ想定されたものではなかったというふうに考えていいかと思います。もっと長期的な、イメージ的なもので地域の活性化が図られたのではないかなというふうに、私は三井先生の話を受け取りました。ただし若干、だとすると、私の専門の、特にアジア経済の観点から見ると、いくつかやや心もとないと言いますか、大きな課題があるかと思います。
大きく2つをここで指摘したいと思いますけれども、1つは何しろわれわれがこの地域の魅力を高めたとしても、いろんな人に来てもらわなきゃ困ります。日本国内はもとより海外にこの地域というのは非常に魅力的な地域ですよ、日本の名古屋地域というのは自然との共生でこれだけ進んでいるんですよ、あるいは進もうと努力しているんですよというアピールをするとしても、アジア地域に一たん目を転じますと、どういう状況になっているかと言うと、ものすごい非常に激しい観光客の奪い合い競争をやっています。
一例をあげますと、たとえば台湾、マレーシア、韓国。韓国は最近、金大中がテレビに出てきて韓国に来てくださいとアピールしていますけれども、あれと同じようなことが盛んにおこなわれていますし、さらには非常にいいニュースか悪いニュースかわかりませんけれども、同じ2005年に香港にディズニーランドがオープンします。これを考えますと、自然との共生というテーマで確かに未来の先取りではあるんですが、こういう哲学的なテーマよりはおもしろおかしいディズニーランドに流れる人の方が多いんじゃないかという気がいたします。ほかにいろいろと不安材料はあるんですけれども、時間の都合で…。
こうしていきますと、1つはそういうかたちでどう域外にアピールしていくか。万博の計画にはどちらかというと経済効果の話が多くて、国際競争という面がちょっと欠落しているような気がいたします。
2点目といたしまして、観光客に来てもらう大前提となります地域をどう魅力的にアピールしていくか。これについては、名古屋そのものはかなり観光資源としてのアピールの弱い地域じゃないかなという気がいたします。さきほど名古屋と長野を間違えられたと言いましたけれども、たとえばアジアの街角を歩いてみてください。小さい旅行代理店がたくさんありますけれども、見ていただくとわかると思いますが、名古屋ツアーというのはほとんど組まれていないんですよ。一番人気があるのはもちろん東京ですね。これはディズニーランドがあるからですけれども。次に、大阪・京都がひとくくりになっているやつ。次に人気があるのは札幌。冬に行くと雪が見られるからとアジアの人は喜んで行くんですね。もうこの辺で終わりかなと思うと九州とかも結構人気があるんですよ。これは飛行機の便数が多くて、近くて安くて手軽に日本をエンジョイできるかなという気がするんですが、名古屋というツアーはほとんどないんですね。
そういう点から考えますと、非常に地域的な魅力に、もちろん万博をきっかけに高めていけばいいとは思うんですけれども、今のところそういう点で非常に乏しい。あるいは万博という目玉でもし来ていただいたとしても、たとえば、この瀬戸を外国の観光客の人が歩いていただいたらどういうことになるか。もちろん大嫌いになると思いますね。トラックの粉じんで汚れまくって帰る。何なんだここはと。もう道幅も狭いですね。非常に車優先の道幅です。
こういうことを考えていきますと、まずアピールがうまくいくのかどうかという点と、来てもらったとしても気に入ってもらえて、本当に名古屋というのはあまり知らなかったけれども、いい所だったという点で印象に残ってもらえるのかどうか。別の意味で印象に残っちゃうんじゃないかなという気がいたします。
新しい空港が常滑沖にできますけれども、たとえば、今のあそこの名古屋空港からここに、愛知万博に観光客に来てもらったって、これはものすごい苦労ですよ。バスを乗り継いで、案内も全然ない。非常にバスの本数も少ない。これはほかのアジアの国々の空港から比べて見ますと、非常に不便さを実感するかと思いますね。そういう点で、もちろん「共生」という中身も大切ですが、そういうインフラの面でどう魅力をアピールしていくかという点で、既にマイナスのところからスタートしていると思います。経済効果云々、もちろんこれにかかってくると思いますけれども、少し議論する必要があるのではないかというふうに感じております。
ちょっと三井先生の話とは大きく広げすぎたきらいがあるかと思いますけれども、大体感覚としてはこんなところです。あと、フロアの方の意見をお願いしたいと思います。以上です。
○司会 どうもありがとうございました。多少三井さんの講演の内容を超えたような話もありましたけれども、いつも世界を歩いている小井川君らしいコメントだったと思います。では、三井さんの方から何かございましたらお話しいただけないでしょうか。
○三井 確かに経済効果で正当化する時代ではなくなっているかもしれません。それはそれとして、ただインフラの整備とか、そういうイベントを誘致することによって、その地域がほかの地域に先じて整備が進むという意味で、開催する意義というものはあるでしょう。ただ、それをどれだけ前面に押し出して、「だから誘致しよう」と一般の人々みんなの賛同を得るための新たな指標を開発しないと難しいのかなと思います。今までは経済効果だけでうまくいっていたんだけど、これからは、何か新しいものを開発する必要があるのだと思います。
シンクタンクは、経済効果の調査需要がなくなると、商売あがったりですから、そういう意味で、シンクタンクが何か新しいものを考えるかもしれません。
それから今の話を聞いていて思ったのは、やはり、海外から来た人を中心に瀬戸を気に入ってもらうための仕組みづくりを、ちょっと真剣に考えないとこれは大変だなあということを感じました。
○司会 どうもありがとうございました。今、小井川さんのコメントの内容というのは、また今後地域政策とか博覧会計画等で公開ワークショップをやっていきますけれども、そういったなかでも少し深めていける内容ではなかったかというふうに思います。引き続き、先ほどご紹介しました伊沢さんの方からコメントをいただければというふうに思います。
○伊沢 ご紹介にあずかりました伊沢と申します。隣の小井川先生と同じく国際経済学を中心に専攻しておりまして、学生の皆さんに教えているわけですけれども、そういう観点がありまして、私自身にとりましてもこういう大きなイベントの経済効果をどのようにはかるのかということに関しては、私自身非常に不明確な部分が多いものですから、今、非常に詳しい三井さんからの報告をいただいたうえで、果たして妥当なコメントになるかどうかわからないのですが、いくつか考えていることを述べたいと思います。
まず、1つなんですが、先ほど報告の最後の方で経済効果をいううえではいいことをいろいろ出していくわけですけれども、悪いものもある。排気ガスであるとか、地価が上がったり、あるいは週末の道路等の混雑現象とか、先ほどの小井川先生のお話ともちょっと重なってくるんですけれども、経済効果としてトータルの消費、投資としてこれだけのものがあって、それが数倍の誘発を生むという、プラスの面の数値をどうしてもこういうイベントに関してはあげていくことが多いとは思うんですけれども、実際はそういう意味でマイナスの面もある。地域の住民が負担していかなきゃならないような混雑現象によるロスの部分。そういったものを差し引き、ネットの計算ということをある程度意識していくうえで経済効果というのを言わないと、今の人々の価値観が多様化しているなかで、単に行け行けどんどんの経済効果が膨らんでいく部分だけではなくて、もっと身近な部分に目をやって、人々からすればその経済効果のプラスとマイナスというのをはっきり示したうえでトータルでどれぐらいなのかと、そういうことをある程度言わなければ説得力を持たないだろう。もちろん、それでプラスの部分も多いとは思うんですけれども、もちろんそれがすべてを規定するわけではないと思います。
先ほど、じゃあその経済効果の誘発の効果、一時的な最初の効果がどれぐらいの影響をもたらすかということですが、大体4倍ぐらいから徐々に低落傾向にあるというお話でした。ちょうどこの資料にも出ています主な博覧会の生産の誘発倍率というのは、大体3倍前後で出ているわけですけれども、日本でこういう博覧会が開かれた時期というのは、比較的好景気の時期が多いわけでして、比較的人々の消費性向も高かったのではないか。そういうなかで、あるいは人々の投資に関しても先行きを非常に明るく持っていた時期なわけです。現在不況のなかにあるわけですけれども、2005年にはもっと景気がよくなるのかもしれませんが、現在非常にある意味では下を向いて非常に悲観的に予測を立ててるなかで、この博覧会に向けての投資規模とか、そういうものに関してこれまでと大きく誘発倍率を考えるうえで、構造的に変化が出てきているんじゃないか。そんなような気がいたしました。
そういうことを考えましたのはほかにも理由がありまして、今回の愛知万博に関しまして、国際博に関しまして、入場予想人数というのを大体2,500万と見積もっているわけですね。過去の博覧会の入場人数というのを見てみましたら、1970年の大阪万博のときというのは、大体初めは予想が3,000万ぐらいだったそうですけれども、延べで6,000万を超える人々が来た。つくば博が約2,000万人。大阪の花博のときが2,300万ぐらいですかね。というようなかたちで大体半年間の期間で博覧会というのは開かれるわけですけれども、今回のそういう見込み、予測を立てる上での2,500万という数字が、ある意味では過去の傾向にのったうえで推計されているのに過ぎないんじゃないか。そういう気が若干するわけです。
といいますのは、かつて昔に比べても先ほどの小井川先生のお話にもありましたけれども、価値観も多様化しているなかで、余暇の過ごし方、あるいはたとえば博覧会に休日遊びに行く、休日どこかに行くというときに選択肢がたくさん増えてきたわけです。そういうなかで、同じように愛知博が従来どおりの集客能力を持っていけるかということに、若干不安な気分というのがないことはありません。そういう部分が、実際、計測されるときにどういうふうに参考にするのか、ということがちょっと知りたい気がいたしました。実際に計測するときというのは、終わった後に実際の人数を出して計測するわけですけれども、ある程度事前にどれぐらいの効果があるかということをもし考える場合に、そういう集客人数等に関してどういうような予測を立てられるのだろうかということが1つ興味を持っていることです。
もう1つなんですけれども、愛知万博がもたらされて、その後にどういうものが残っていくかということに関しまして、私自身、特に愛知博に関して非常に関心があるわけです。その経済的な面に関して1つ興味を持っていることというのは、博覧会の後にこの跡地があいち学術研究開発ゾーンの一角を占めるというかたちで、科学技術交流センターというものをつくっていく。そういうなかで、産官学の研究開発、あるいは製品化といった部分の交流研究を深めていく、そういう場所に愛知東部丘陵をしていこうという案があるわけです。
先ほど三井先生の方からも新しい中部をつくるうえで、東海リサーチ・リンケージ、つまり鈴鹿山麓の研究学園都市の構想、あるいは東濃の研究学園都市の構想、そういうものと結んだかたちでの総合研究交流を深めていく。そのうえで、製造業、産業の活発化を促していこうということが考えられるわけですね。愛知万博によって多くの企業、人々が東部丘陵に集まってくることによって、この地域の立地条件というものが気に入れば、こういう所に新しい産業を立地しようとか、そういう動きが出てくる。結果として、愛知の産業構造というものに大きな影響を与えるかもしれない。
そういう意味での期待ができるわけなんですけれども、ただ私自身、この愛知の産業と研究開発という部分に関しまして、いろいろ聞いてきたことで気になることというのは、特に愛知県の場合、東京とか大阪に比べますと、産官学という、産業あるいは学界、あるいは自治体といった部門の連携が比較的弱い。新しい技術を産業化していく、商品化していく動きというのが比較的おとなしい。じゃあ技術はないのかというと、非常にすばらしい技術を持っている。あるいは非常にすばらしい生産技術を持っている企業なり研究者がたくさんいるわけです。
そういう愛知において、なぜ、たとえばそういう動きがおとなしいのかということに対して、よく言われることは、そういう産官学のお互いのニーズを結びつけ合うコーディネーター、仲介者の役割を果たすものが少ない。つまり、一種のサービス業ですね。この愛知県にはそういう産官学のそれぞれのニーズをお見合いさせる部分がおざなりになってきたのじゃないか。そういうなかで、たとえハコものとして非常に立派な科学技術の交流センターができる。あるいは学園都市の構想ができたとしても、結果的にその間の有機的なつながりというのを生むうえで、十分仲介の役を働くだけのコーディネーターの部分というのが、比較的この愛知県というのは弱いのではないか。それでは、結果として、せっかく愛知県において新産業をつくっていくといううえでの構想において十分効果を発揮しえないのじゃないか。だからそういう部分で博覧会にかけて盛り上げていって、その後、さらに博覧会を開いたことが愛知に大きくプラスの影響をもたらしていくためには、そういう部分、単によいものをつくるハードの部分だけではなくて、お互いをつなぐサービス業といいますか、サービスの部分、そういうコーディネーターのような役割を重視していく、育てていくということが必要ではないかという気がいたしました。
以上、いくつか述べさせていただきまして、ちょっとまた話が広がった部分もあるとは思うんですけれども、私自身感じていること、および今の三井先生の報告に関して感じたことを述べさせていただきました。
○司会 どうもありがとうございました。マイナスの効果であるとか、あるいは今後の日本経済の動きと愛知万博との関連でありますとか、それから学術研究ゾーンといった、今、いろいろあったと思うんですけれども、三井さん、すべて答えるのはなかなか難しいと思うのですが、よろしくお願いいたします。
○三井 まずネットの経済効果の話ですが、これは従来から公共工事、たとえば地下鉄をつくるときなどには、必ず費用便益分析というものをやり、つくるためのコスト、それからつくったことによって得られる便益、どっちが大きいかを計算して比べ、便益の方が大きければ、それじゃあ工事をやりましょうという具合に決めるということになっています。
そういう意味で、万博は、日本人があまり楽しむものがなかった時代に、やること自体に意義があるということで、あくまでも博覧会を開催することが前提のうえで、ついでに景気づけに経済効果を計算したというのがそもそもの出発点だと思うんですね。だから、マイナスの効果については、それほど考えていなかったと思います。ただ、こういう時代になってくると、やはり一般の公共工事と同じように、公費を使うものである以上、費用便益分析みたいなこともやらなければならなくなってきたのかな、という感じを今お話を聞いていて思いました。
それから、これは私の記憶違いだったかもしれませんけれども、「大阪万博の入場者6,000万人に対して、つくば博は会場の規模が3分の1だから入場者数2,000万でいこう」という具合に、適当に入場者数を想定して準備をすすめてきたら、その通りになったというような話をかつて聞いたことがあるような気がします。これから考えると、昔は、入場者数もあまり重要な問題ではなかったということかと思います。このあたりも含めて、近年、博覧会をするためには、いろいろと厳しく追及されて、大変なことになってきているようでして、そういうことも含めて、「大変だな」というのが実感です。
○司会 どうもありがとうございました。
私の方から1つ、3人の方に聞いてみたいことがあるんですけれども、私の関心であるだけでなく、多分、皆様の関心のなかにもあると思うんですけれども、最近の国際博覧会をめぐる動きとしまして大きな変更がおこなわれました。といいますのは、いわゆる広域開催、分散開催が決定した。それによって、会場基本計画も当然変わってきますし、それからその他の関連事業もどの程度かまだわかりませんが、変更されるだろうというふうに思われます。こういった大きな修正、変更がこれまで測定とか予測というのはなかなか難しいわけですけれども、そういう意味での経済全体、たとえば愛知県とかあるいは中部圏全体に及ぼす経済効果の観点から見てどうなったのか。
それから特に、先ほど三井さんのご報告のなかでも瀬戸について若干のコメントがあったわけですけれども、この瀬戸の周辺地域にどのような経済効果、期待された経済効果があったんだけれども、それがなくなってしまったとか、あるいはそれが分散化されてどうなったのかといったあたり、そもそも現時点で効果自体を測定するのは難しいわけですが、心証的にでも構わないのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。まず、三井さんからお話ししていただければありがたいんですけれども。
○三井 結局、青少年公園が会場になりますと、どうしても長久手からのアクセスが優先されるかたちになって、海上の森だけでやるときに比べると瀬戸からのアクセスの充実度が弱くなるだろうなというのが率直な感想です。そういう意味で、瀬戸にとっては効果が小さくなる方向、いろんな意味で効果が小さくなる可能性が強くなったなという感じです。
○司会 どうもありがとうございました。その点に関連しまして、先ほど小井川さんにもう少し地域のイメージアップとか、あるいは観光客集客能力というのをもう少し付けなくちゃいけないという点から、今、三井さんの方から少し、より一層難しくなったというような話もあったわけですけれども、小井川さんの視点から見ると、そういうマイナス面をどうすれば克服できる、あるいは少しでも少なくできるかというところをちょっとしゃべれたらしゃべってもらいたいんですけれども。
○小井川 分散開催について触れなくてもよろしいんですか。
○司会 どうぞ。
○小井川 分散開催とも関係があるんですけれども、分散開催についてはあまり自分自身勉強してないからかもしれませんが、あまり気にしてないんですね。何でかというと、どのみち会場の規模、あるいはどんなに集約しても万博そのものではとても魅力的にならないというのが僕の考えです。やっぱりかなり広域的にこの地域の魅力を結集して、もちろん万博をコアにですけれども、そうしないと、やはりいろんな意味で国内的にも対外的にもとてもアピールできないと思います。そういう点ではいろいろテクニカルな問題があると思いますね。お金がかかるようになったとか、今までの計画はどう変えるかとか、そういう分散開催に伴う問題があるかと思いますけれども、要するにわれわれはどうやっていくかという話ですから、じゃあハコに合わせて中身を充実させましょうという話になるかと思います。
先ほど少しネガティブな話ばかりしましたけれども、実はかなり広めて、万博を契機にこの地域のアピールをしていくことについては、たとえば後ろ側には非常に豊富な観光資源等がありますし、名古屋の人はすごく親切ですから、そういう点をいろいろと統合していきますと、十分今まで知られなかったけれどもこの地域というのはおもしろいんですよ、日本のよさが残ってますよというアピールをする潜在力はすごくあると思います。それは、またおいおい僕自身も詰めなきゃいけないところあると思いますけれども、そういう点からもう一度万博をとらえ直したらどうかなというのが僕の問題提起です。以上です。
○司会 同じ質問なんですけれども、伊沢さんはどう思いますか。
○伊沢 分散開催ということになったことで、瀬戸への経済的な影響という点に関して言いますと、私自身も先ほど三井さんが言われたように、瀬戸から長久手よりのアクセスというかたちがどちらかというとメインになってしまうということになって、マイナス部分は大きいだろうなという気はします。
それと、万博全体ということで言うならば、青少年公園がもう1つの会場になった。私も子供連れで青少年公園に遊びに行ったりすることがあるんですけれども、わりと日常的に県民のレクリエーションの場になっているところが会場になるということと、比較的車が主ですけれども、アクセスが確保されているところですから、いろいろと集客のうえで都合のいい部分があるとは思います。しかし、ある程度でき上がってしまった公園というか環境を会場として「自然の叡智」というテーマで万博をやっていくわけですけれども、その部分が若干弱くならないかなという点でちょっと気になるところはあります。それが、万博自体のムードに水を差さなければいいなという気がします。
瀬戸への影響ということで言いますと、さっき言ったようにどうしても長久手から青少年公園、そして海上の森という線でのつながりになってきて、そこからさらに北上して面で瀬戸の方に流れていくという部分が弱くなってくる。これは瀬戸の経済的な振興ということを考えるうえでは、いい意味で試練に立ったんじゃないかと。要するに前は瀬戸の海上の森だけが会場でというかたちで、ある程度黙っていても来るかな、瀬戸へ寄ってくれるかなという当てがあったのが、その人たちが来ないかもしれないとなると、何とかその流れを呼び寄せるものを瀬戸のなかでつくっていかなきゃいけないというようにその部分をバネにして、逆バネにして、プラスの方向に発想を変えていく。
世界陶芸村という構想もあるようですけれども、その世界陶芸村の関連施設、関連イベントを尾張瀬戸の方にずっと引っ張って、人を呼び込んでいく。そういう構想、まだ具体的にどういうものになるかということがはっきりは見えていないんですけれども、逆にそういう青少年公園という大きな会場があらわれたことで、よりなおのこと瀬戸を、1,300年陶器をつくってきたこの伝統の町を見せなきゃいけない。人を引っ張ろうという意識が市民のなかで盛り上がる。その部分を考えると、むしろプラスの部分も多少あるのではないかという気がします。
○司会 もう1点ございまして、先ほどのお3人のお話のなかでも幾つか出てきたんですけれども、三井さんの用語とは少し変わるんですが、長期的な効果と申しますか、たとえば伊沢さんが強調された学術研究ゾーンと研究開発、それからインフラ整備とか、それからお話にはなかったんですけれども、跡地利用の問題で新住構想の話もありますし、少し長期的な視点に立った経済、あるいはもう少し広い社会効果といいますか、そういった点で、もしご報告に補足するような内容がございましたら、まず最初に三井さんにお話しいただきたいんですが。
○三井 新住構想のお話はするのを忘れましたが、そういったものも含めて地域の発展ということを計画されているわけで、あくまでもその起爆剤としての万博と位置づける。そういう意味では、先ほどは里山の整備という言いましたけれども、全体の都市づくりをうまく実現してほしいなという感じですね。
○司会 あとインフラ整備とか、学術研究ゾーンについて何かございますか。
○三井 特に付け加えることはありません。
○司会 では小井川さん。
○小井川 たびたびすみません。やはり何と言ってもいろんな意味でこの地域が魅力的になって、それが全世界に、あるいは日本中はもちろんですけれども、世界的に知ってもらうことによってこの地域の潜在的な魅力を広めていく。これはもちろん長期的な効果です。そのためにはいろんなサポートが必要なんですけれども、先ほど言いましたようにインフラを非常に効率よくするでありますとか、いろんなかたちで地域の魅力を高める支援をしていく。これは方向性が合ってます。つまり、短期的なやるべきことと長期的な効果というものが合致していますが、問題はそれがあまり相入れないところであって、たとえば長期的に望まれることであっても、短期的にはそれができないようなこと。国際交流の推進ですとか、あるいはこのあたりに英語の看板をいっぱいつけるのは、これは長期的な意味でいろんな人に見てもらうのにはいいんですけれども、お金がかかります。それに果たしてきちっとお金がつくのかどうか。そういう長期的な目的と短期的な目的のずれるところで問題が生じるかなという気がいたします。ただし、それは非常にマイナーだと思います、愛知万博に関しては。やはり長期的な目標、地域の活性化、イメージアップ等々を目標にしていけば、かなり短期的な目標もついてくるのではないか。もちろんインフラもそれに入りますけれども。以上です。
○司会 では伊沢さん、手短にお願いします。
○伊沢 先ほど研究開発ゾーンの絡みでお話したんですけれども、愛知県というのは製造業が非常に強くて、製造品の出荷額というのが20年連続日本一という、非常に製造業のメッカみたいな土地なわけなんです。日本経済全体で考えたときに、製造業がさらに強くなるとか、さらに雇用を拡大していくというのはかなり難しい時期に来ているんじゃないか。そういうときにおいて、じゃあ何が拡大していくんだといったら比較的高度な知識集約的な情報サービスとか、そういうサービス産業をこれから育てていかなきゃいけない。愛知において万博後、万博によってたくさんの人をここに寄せて、この土地の魅力や立地条件のよさとかそういったものを知ってもらったうえで、ここに研究者なり、技術者なり、企業なりが集まってくる。
そのときに、今度は、製造業のメッカの愛知だからこそ、新しい産業、ある意味では製造業に頼らないでもやっていけるような部分。今までどちらかと言えば愛知県の産業のなかでは弱かった部分。そういうソフトやサービスとか、三井先生の報告にもありますけれども、そういう部分の産業育成に目を向けてもらいたいなと。そうすることでまず製造業のメッカの愛知からある意味では変革を伝えていく。そのうえでの可能性がいろいろあると思うんですね。
この愛知県の周辺だけでたくさんの研究、学園都市の構想があり、技術者・研究者が集まっていて、根っことなる、核になる部分というのはかなり集まってきている。これをやっぱり生かさない手はない。そのきっかけとして愛知万博というのが人々をこの地域に目を向けさせる。今までは名古屋を通り過ぎて大阪へ行ってしまった人、東京へ行ってしまった人をとめ置く魅力的な場所ではないか。実際、東京や大阪より住むには非常に土地も広いですし、緑も多いですし、生活環境という点では非常に魅力的なところでもありますから、そういうところにたくさんの人や物が集まってくる。その起爆剤になるのはないかというふうに考えています。
○司会 どうもありがとうございました。今回、ワークショップというかたちで設定させていただいたのは、ぜひともこういう設定ではお話しづらいかもしれませんが、皆様からもご発言なり、ご質問なりをいただきたいということがあったわけなんですけれども、残された時間はそれに費やしたいと思うのですが、フロアからご質問、ご発言等ございます方は挙手をしていただいて、マイクを持ってまいりますので、マイクを受け取った後、お名前を最初に言っていただいて、お話をいただければと思います。どなたかご発言、ご質問等ございますでしょうか。特にはないようですので、次回既に皆様方パンフレットを見ていただいているとは思うんですけれども、「地域政策」が12月16日に同じ時間から同じ場所で開催されます。これは「博覧会よりもまちづくりを」というテーマで、この地域のことをよく知っておられる地域問題研究所の松村さんという方にお話をいただきまして、今回と同じようなかたちでお話を進めていきたいと思います。それから年が明けまして、第3回は「博覧会計画」ということで、博覧会開催に関して、「博覧会イメージと瀬戸のまちづくり」ということで、本学経済学部教授の木村さんからお話いただこうかというふうに考えております。
きょうは「地域経済」ということをテーマにしまして、博覧会が開催された場合の経済効果に焦点を絞ってお話をしてまいりました。私どもは私どもなりにこの経済効果に興味を持っていまして、今後、どういうかたちで博覧会開催に向けて、それからその後、この効果をどういうふうに測っていくのか、今、考えている最中なんですけれども、そういった点では非常に参考になったというふうに考えております。
そろそろ時間に近づいてまいりましたので、今回の公開ワークショップはこのあたりで終わりにしたいというふうに思います。本日は、長時間にわたりまして、本当にどうも皆さんありがとうございました。