2000年11月 8日作成

第9日目 沖縄の私
「沖縄に行って来たんですって?」
「大学英語教育学会(JACET)という学会に出席するためだったんですけどね。」
「沖縄は初めてだったんですか?」
「そうです。思っていたよりも、ずっと興味深い、と言うか、いいところでしたね。」
「まだ暖かかったでしょう?」
「行く前に、いろいろ聞いていて、半袖で十分だ、と言われていましたので、その通りにしていきました。これは正解でした。」
「海もきれいだったでしょう?」
「それが滞在中はずっと曇っていて、一度も晴れませんでした。」
「普段の心がけでしょうね?」
「何か言いましたか?」
「いや...別に...ところで、この忙しい最中によくそれだけ時間を取る気になりましたね。」
「ひとつはですね、名古屋学院大学の卒業生で、今年の4月から沖縄大学の専任講師になった人がいて、外国語学部としては初めて大学の教員になったものですから、その人に会うという目的もありました。
 元気で頑張っているようで、安心しました。」

「学会の方は発表でもされたんですか?」
「今回は発表はしていません。それより、来年8月始めに、自分が関わっている学会が全国大会を開くのですが、そのための視察という目的がありました。東アジアの言語政策とか、その言語政策に関わる話ですが、初等教育における外国語教育の導入、といったテーマでシンポジウムや講演がプログラムの中に入っていたので、その内容を検討するという目的があったわけです。
 似たような学会ですので、あまりにも同じ内容でやるのも困りますし、同じ内容でこちらが見劣りするようだともっと困りますからね。そのあたりの偵察です。」
「で、どうだったんですか?」
「いいものもあれば、ちょっとどうかな?というのもありました。今回は沖縄で開催するということで、「東アジア」ということを中心に置いたプログラムでした。それで、「アジアにおける沖縄の歴史と言語」という講演を最初に置いて、それに続いて韓国、台湾の英語教育、特に初等教育への外国語教育の導入というテーマでいろいろプログラムを組んでいました。これはだいたいおもしろかったですね。逆に、最後のシンポジウムは「東アジアにおける21世紀の英語教育」というタイトルでしたが、「英語教育」という部分が、「大学の共通教育での英語教育」に置き換わってしまっていて、期待はずれでした。私としては、「東アジアにおける21世紀の言語政策」というような内容を期待していたのですが。勝手な思いこみといわれればそれまでなんですけど。」
「人はたくさん来ていたんですか?」
「そうですね、たくさん来ていたんじゃないですか?でも、何しろ、連休期間中に沖縄である学会ですからね、会場にはどうもそれほどの人がいたかどうかはよくわかりませんね。普通の研究発表会場の中には閑散としているところもありましたからね。会場を抜け出して観光に行っていた人もいたんじゃないですか?」

「初めての沖縄ということで、どこか見に行かれましたか?」
「2日目のお昼に首里城に行きました。かつての琉球王国の中心です。それから3日目のシンポジウムの途中から、平和祈念公園に行きました。」
「どうでした?」
「あのうですね、ひとことで言うのは難しいんですが、沖縄の歴史というと太平洋戦争の時の沖縄戦が思い浮かぶわけですよ。それは平和祈念公園でいろいろ考えることがあったんですが、それがこの夏のサミットの前にクリントンが、東京をとばしてやって来たところですね。旧日本軍は沖縄戦で持久作戦を取って、それで太平洋戦争で唯一の地上戦になって、住民が巻き添えになったんですが、当時の東京の政府がどのように沖縄を見ていたか、ということがわかりますよね。で、首里城に行くと、沖縄が琉球王国として東アジアと東南アジアの両方にまたがって存在していた頃から、その歴史がわかります。もともと別の王国だったところに明治維新の時に、「琉球処分」として、いきなり日本によって国を亡ぼされたわけです。これは、日本史の教科書にほんの数行登場するだけですよね。そこに日本の天皇制や神道を押しつけたわけですから、うまくいくはずがないわけです。おまけに、明治維新の前にペリーが日本に開国を迫りましたが、その時にペリーは沖縄へも行っていて、執拗に交渉を求めました。その時に、すでにアメリカは沖縄の戦略的重要性を十分に認識していて、太平洋戦争後に基地を作る構想を持っていたと言われています。
 そんなようなことも含めて、もろもろの要因が絡み合って現在の沖縄があるわけですよ。自分では本で読んで断片的には知っていたんですが、実際に現地に行ってさわりだけでも見ることができて、その意味では自分としてはとてもいい旅行だったと思います。」

「なかなか興味深いお話ですね。平和祈念公園は海の近くにあるんでしょう?TVで見ましたけど。」
「そうです。お話ししたように、この日も曇っていたんですが、水平線がきれいに見えて、真っ青な海というのではなかったですが、それでもきれいでした。」

「ところでですね、あんまり聞きたくないんですけどね、その学会って全部で3日間だったんでしょう?2日目の昼間に抜け出して、3日目の途中から抜け出して、それでいったい学会の方はどうなっているんですか?」
「いや、それは、ちゃんと見るべきところは見て、押さえるべきところはちゃんと押さえて、その上でちょっと抜け出したということです。」
「でも、3日間のうち2日抜け出したんでしょう?」
「人聞きの悪いことを言ってもらっちゃ困ります。2日目は午前中の最初のプログラムが終わってからお昼過ぎまで首里城に行っていて、夕方のプログラムにはちゃんと参加しています。3日目は途中まではきちんと聞いていたんです。」
「パソコンも原稿を書くための資料もたくさんカバンに詰め込んでいらっしゃいましたが、結局できたんですか?」
「そのお話しはまた次回にさせていただくということで...」

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