論文の書き方と留意事項
2014.01.14更新

■論文を書く場合の注意(総論)

論文の一番大事な要素はもちろん内容であるが、それを表現するための日本語が不十分であるとせっかくの内容が色褪せてしまう。これはすべて教養の問題であり、学力の問題ではない

教養を身につけるには、日頃より「読む・書く」という習慣をつけることが肝要である。ただし、「読む」場合には教養豊かな人の本を読むこと。新聞の場合には、社説などでもよい。HOWTO本は、情報マガジンと同様に内容だけに価値があり、文章に深みがない。また、「書く」場合には、これらに使われている一文の表現をまねることが一番よいだろう。

このような能力は大学時代に身につけなければ、就職前のエントリーシート作成に大変困ることなる。また、就職後でも、適切な文章が書けないと大きなつまずきになることも多い。大学でレポートなどを書く場合には、題材(参考書やテキストなど)が与えられている場合が多い。このような機会を通して、少しでも教養を身につけるよう各自努力すること。

パソコンを利用した作成法:新卒論作成法


■ 全体の注意

論文は、これまで書いたことのある文章(感想文・レポート・レジュメ・報告書・手紙など)とは、基本的スタイルが全く異なる。自分でテーマ・問題を設定し、関連する文献を読み、必要な関連事項を調査し、さまざまな視点で捉えることが要求される。また自分の感想や反省など客観的に表現することが重要である。問題の周辺からその問題の所在を明示し、解決のためのアプローチ(分析手法:統計的データ処理、アンケート調査など)を適切に選択し、論理だてて(順序良く)述べることが基本スタイルである。

自分ではわかっているつもりでも、読者との前提知識が異なるので、そこを留意して記載しなくてはならない。初めて使う専門用語については解説を必要とする場合もある。また、自分で勝手な単語を創造しないようにし、国語辞典などで必ずチェックをすること。しゃべり言葉(口語)は、論理的文章として不適切であり、教養の無さを露呈してしまうので決して使わない。類義語辞典を使用することで言葉を検討した後、選択すること。

レジュメでは、要点を記すだけでよいが、これは実際に自分が説明を加えることができるからである。論文の場合には、そこに書かれている文字だけで、相手が自分の伝えたい内容を完璧かつ正確に理解できなくてはならない。


■文章の構成

中学までの国語で学習している通り、文章は単語や文節、段落などによって構成される。常にこれらを意識して執筆すること。


■ 体裁における注意事項

チェック項目         は必須
目次
目次と本文中のタイトルが合っていること(Wordの目次機能を使い、自動的に作成・更新させる)
 目次にページ数をつける。(自動で入力できる)
章と節
 番号とタイトルは 2-1 ○○○○○○ のように1マス空ける。
 2-1.のようにしない。(ドットは略す場合に使う)
 節と節の間には1行あける。
 タイトルは体言止めにする。ただし、1単語のみとしない。
 タイトルポイントを本文より大きくしたり、フォント(ゴチックなど)を変更する。(見出し機能を使う)
 章の中に1つしか節がない場合は、節はなしとする。
章は1頁~5頁程度を目安とする。
章毎に改ページをする。(改ページの挿入
文(センテンス)
 1文は1行~3行程度を目安とする。5行以上にしない。
主語と述語が一致しないケースが多いので、整合性があるかをチェックする。
 連絡文ではないので、体言止めは使用しない。
 「~ある・である」調で書く。ただし、すべてこれをつけると文がおかしくなる。
 句点の入れ方は、前後の単語のつながりを意識する。1行に1~2箇所程度が目安。(多すぎず、少なすぎず)
段落(パラグラフ)
段落は内容のまとまりを意識して区切る。(主張を明白に)
 3行~15行程度が目安。(バランスに注意)
段落の最初は1マス下げる。(ぶら下げインデント
1行1段落にしない。(短すぎる)
単語
 論文は感想文ではないので、「私は」という一人称は使わない。
指示代名詞(これ、そのなど)を使う時には、何を指しているのかを十分吟味する。
 副詞に口語が多く見られるので、漢字を含んだ副詞に直す。
「こと」「もの」など抽象名詞を多用しない。
 「の」を連続させない。(Wordでチェックが出る)
 同じ内容ならば、短い表現を採用する。
 漢字・熟語を積極的に使い、何度も繰り返し同じ言葉を使用しないことは英語も同じである。
 重要な語句(キーワード)については、英語を付記しておくこと。 
スペルチェックをかけるために英単語は半角英字を使用する。
数値に言及する場合には、単位(比率・%も含む)に注意し、大きな桁数は半角を使う。
 はじめて現れる専門用語は、略してはいけない。頻繁に利用する場合には、○○正式用語○○(以下、○略語○と)のように記す。
 重要な語句は、本文中で説明できない場合に脚注(脚注機能)を利用する。
 情報関連用語の場合には、『日経パソコン用語辞典』などを使う。
図表およびグラフ
図表には名前と番号を入れる。(図表番号を利用)
 元になったデータの出所を明記する。
 図・表・グラフは別であるから、表記を分類する。
 参照するデータは本文中に図表として挿入する。その他の関連データは付録や付表としてまとめて最後に掲載してもよい。
すべてセンタリングする。
グラフの枠線は消す。
表やグラフがページをまたがない。(次のページから始める)
図表中の文字が大きい場合、本文の文字サイズ(10.5pt)程度に調整する。
箇条書き
 レジュメと論文は異なるのもであるから、できるだけ箇条書きにはしない。
どうしても箇条書きで列記する場合は、「~は、以下の3つに要約できる。」というように本文中で述べること。
列記する場合には、Wordの箇条書き機能や段落番号を使う。
参考文献・サイト(←こちらのサイトで詳細確認)
 参考文献・サイトに連番をつける。(フィールドの挿入で自動的に番号を振る)
 書名は『』、論文は「」で括る。
五十音順またはABC順に並べ番号を付ける。
 PDFファイルは文献扱いとする。
 参考文献の奥付はコピーをしておくと便利である。
表記のゆれ WordのF7キー
 同じ表現で半角と全角を混在させない。
年号は、西暦と和暦のどちらかに統一する。
「こと」と「事」を混在させない。
漢字やカタカナの変換ミスに注意する。

■文章の校正(ダメ出しサンプル)

一度、書いた文章は自分で声を出して読んでみると良い。しゃべり言葉ではないので、多少堅い表現が適当である。口語の例としては、「とても」、「まさか」、「平気だ」、「どんどん」、「すごい」などたくさんある。これらの修正には、類義語辞典を使うとよい。

以下に挙げる例は、間違えやすい例である。少なくとも以下の点はダメ出し作業で修正しておく。また、上の体裁における注意事項の必須項目も必ずチェックしておくこと。

    
修正点変更例
不要な長い表現
「~したわけだが」「~したが」
「~推定を行なった」「~推定した」
「思うのである」「思う」
類義語(文脈において修正候補は多数ある)
「進む」「進展する」「進行する」など
「大変である」「容易でない」「困難である」など
「思う」「推察される」「見なされる」「考えられる」など
「できる」 「可能である」など
「考える」 「考察する」など
「使う」 「利用する・使用する」など
「調べる」 「調査する」など
「整える」「整備する」など
「作る」「作成する」「生産する」など
「続ける」「継続する」「持続する」など
「見本」「一例」など
「分ける」「分割する」など
「行う」「実行する」「実施する」など
「お年寄り」「老人」「高齢者」
「使い道」「用途」
「うまく」「十分に」など
「変わる」「変化する」「転換する」など
「述べる」「言及する」「論述する」「触れる」「観る」「説明する」など
経済学用語
「値段が上がる」「価格が上昇する」など
「選ぶ」「選択する」など
「会社」「企業」
「買う」「購入する」など
「売る」「販売する」「売却する」など
「お金」「貨幣」「金銭」など
「仕事」「業務」など
情報用語
「データを送る」「データを送信する」
「大きなコンピュータ」「ホスト」「サーバ」など
おかしな漢字の使い方(表現)
数10数十
2,004年2004年
ところ
出来る できる
事 こと
又 また
重ね言葉
求めることが要求される。求めることが要求される。
可能にできる。可能にする。
ITの技術によりITにより
新しい新規参入新規参入
個々の個人個人

■ 序・結を書くときの注意

序と結が一番難しく重要な箇所である。これらは「論文の要旨」とほぼ同じになるはずである。とりあえず、必ず先輩たちが作成した卒論を参照(書き方のまねを)すること。

はじめに」では、問題意識を明記する(個人的な動機を書くのは小学生レベル!)。現在の社会を取り巻く状況やなぜその研究テーマが重要なのかを存分に述べる。テーマの重要性を述べた後、その中でも特に自分が論じたい、自分が詳細に調査・研究した(3章や4章に相当する)箇所を強調する。その後、本文の構成・概略を具体的に述べる(全体を鳥瞰するように)。各章や節がどのような繋がりであるのかを明記する。論文の骨組みを先に述べておくと読み手が安心する。

おわりに」では、まず論じたテーマについて結論を簡潔にまとめる。(もちろん、本文の繰り返しになっても構わない)。最後に、今後の課題について言及すること。これは調査をして行く途中で、重要であるがやり残した他のテーマである。後輩などが自分の卒論をヒントにテーマを選択できるように記載すること。(この場合には、自分の卒論が参考文献となる)

最後には謝辞を書く。自力ですべて(ダメだし含む)完成させた場合には必要なし。礼儀は社会を生き抜くための基本。


■ 要旨を書くときの注意

  要旨は、国語の試験によくある「筆者の言いたいことは何か」である。自分が書いたものであるから、要点をうまくまとめること(必要かつ十分であること)が重要である。まず、要旨は、2,000~2,500字程度で(「はじめに」+「おわりに」)/2 という感じで書くとよい。「はじめに」「おわりに」と同じ表現になってよい。特に、以下のような4段落を意識すると書きやすい。
  1. この論文の背景
  2. この論文の分析手法・進め方
  3. この論文での結論
  4. この論文で触れられなかった重要な課題
最後に全部で何ページであるかを記載する。例:(全18頁)

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