▼ 第06回 残差平方和最小の条件:最小2乗推定量
■ 残差平方和最小の条件
どのように残差平方和の最小値を与えるa,bを探したらよいだろうか?残差平方和は2次関数の和であるからS2は最小値を持っている。高校で習った2次関数の最大・最小の応用で、最小値となるa,bを決定することができる。いま、求めるべき未知数はa,bの2つであるので、S2が最小となる条件を満たす2本の連立方程式(正規方程式)を導出すればよい。正規方程式から得られるa、bの解が以下の推定量(:estimator)である。
■ 最小2乗推定量(公式)
上記(式☆)(式★)の導出は補論で扱う。
□例題06-01:最小2乗推定量 |
難易度:★ |
目安時間:5分 |
ノート |
bを計算するのに利用される平均偏差を示す。またXとYの平均値(Xave、Yave)はいくつ利用されるか。
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■ 最小二乗推定量のワークシートの作成手順
これまで学習した単純最小二乗推定量を求めるワークシートの作成手順を述べる。ワークシートではXとYそれぞれ10個のデータを入力すると推定値が自動的に導出できるように設定する。
【ワークシートの作成手順】
- XとYの各データ系列を入力する。
- それぞれの平均を求める。
- 各データ値からXとYの平均偏差を求める。
- Xの平均偏差を二乗したものを作る。
- それらを合計する。(分母:偏差平方和)
- Xの平均偏差とYの平均偏差を積を作る。
- それらを合計する。(分子)・・・以上、例題10まで
- 係数bの推定量を導出する(F/D)。
- XとYの平均値とGを使って切片の推定量aを求める。
- 10個のXのデータとGHを使ってYの推定値を求める。
- データYの値とIで求めた値をグラフにする。
■ ワークシートの例
最小2乗推定量のワークシートの例
標本数 | A平均 | A平均 | | | D偏差平方和 | F総和 | | 残差合計 | 残差平方和 |
10 | 41.1 | 35.2 | B平均偏差 | B平均偏差 | 1772.9 | 1554.8 | 正規方程式 の条件=> | 0 | 764.07 |
標本番号 | データX | データY | x | y | Cxx | Exy | 推定値:Y | 残差:e | 残差平方 |
1 | 32 | 34 | -9.1 | -1.2 | 82.81 | 10.92 | 27.219 | 6.781 | 45.976 |
2 | 58 | 51 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
3 | 29 | 41 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
4 | 43 | 43 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
5 | 36 | 20 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
6 | 25 | 15 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
7 | 50 | 51 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
8 | 38 | 28 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
9 | 69 | 55 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
10 | 31 | 14 | ? | ? | ? | ? | ? | ?? | ?? |
* 右2列は下の例題では活用しない。
□例題06-02:計算シートの作成 |
難易度:★★ |
目安時間:30分 |
例題集 |
上の表は、例題の解答(ただし推定値などの値はふせてある)になっているが、これを参考にどのような計算手順になっているかを確認する。?となっている箇所を計算する。
手順やこれまでの式が以下の表の部分に相当するかを確認しながら各自で作成する。
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【作成上のヒントと必要事項】
- 標本数は自動的に計算できるようにする。(=counta(範囲))
- データ入力部分以外は自動的に結果が得られるようにする。すなわち、セルには数式を記入しておく。
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▼ 第07回 最小2乗推定法のワークシート(練習)
■ パラメータa,bの計算
ワークシートではaとbを計算する準備ができている。
【ワークシートの作成手順】の8以降で、aとbを求める。
(式☆)を変形し、aを求める。
□例題07-01:推定値a, bの計算 |
難易度:★★ |
目安時間:10分 |
例題集 |
(式☆)と(式★)の推定量からこのデータのaとbの推定値をワークシート上で計算し求める。(式☆)を変形し、a=とする。
また、最初の例題で導出した自分の答え(a+, b+)と最小2乗推定値を比較する。 |
傾きの係数bはワークシートの分子・分母で計算する。一方、切片aは各平均値と得られた傾きbから求めることができる。
【作成上のヒントと必要事項】
- 標本変動は、決定係数を説明する際に使う。
- G係数b、定数項aが計算できるようなセルを作ること。
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□例題07-02:回帰直線の描画 |
難易度:★★ |
目安時間:10分 |
例題集 |
推定値(背景がsilverの?を求めた値)を求め、この系列を使って回帰直線を図に書きこむ。X,Yの平均値(Xave、Yave)と回帰直線の関係はどのようになっているかを考察する。
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推定値を新しい系列として、グラフウィザードから追加する。
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■ 推定量と推定値
推定量(estimator)と推定値(estimate)は、別ものであるから注意する。推定量とは計算の公式、推定値は公式から得られた一つの答えである。したがってデータの計算から得られた(セルに出力させている)結果は推定値で、セルに書き込む計算式は推定量であると考えることもできる。
□例題07-03:単回帰の推定 |
難易度:★★★ |
目安時間:30分 |
例題集 |
作成したワークシートを元に、データの家計の収入:X、家計の支出:Yを使って次の一次関数を最小二乗法で推定せよ。(a、bの推定値を求めよ。)現実値Yと推定値を同じグラフ上に表わす。ここで、Y = a + b X + uの係数a,bが経済学的に何を意味するのかを述べる。
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マクロ経済学の消費関数を想起する。
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last modified :2005.11.05
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